指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

菊地信義さん装幀の本を買わなくなった気がする。

装幀=菊地信義の本 1988~1996

装幀=菊地信義の本 1988~1996

NHKの再放送で装幀家(という言葉はないんだろうか。一括で変換しないんだけど。)菊地信義さんが母校へ行って小学生に授業をするという番組を観た。実は以前から菊地信義さんの装幀がすごく好きで、最近はあまり見かけなくなったなあと思っていた矢先だったので、少しは最近の作品も映るのではないかと期待していた。それで「国境の南、太陽の西」や、金原ひとみさんの「アミービック」とかが菊地さんの装幀だと知った。特に「アミービック」は比較的長い時間取り上げられ、その装幀の意図などが小学生に説明された。その仕事へのこだわりようがひしひしと感じられた。
以前中上健次さんや吉本隆明さんの既刊や新刊をさかんに読んでいた頃は、買う本買う本みんな菊地さんの装幀だということがあった。タイトルや著者名の独特な並べ方や、意図はよくわからないながらローマ字を小さく併記したりする手法が何ともかっこよく感じられた。あと講談社学芸文庫など値段が高くてあんまり持っていないけどやはりかっこよかった。この頃は菊地さんの装幀は一目で見分けることができた。ちなみに出世作埴谷雄高さんの本だったのだそうだ。
中上さんも埴谷さんも亡くなったし、吉本さんの最近の本は菊地さんの装幀ではない。古井由吉さんとか読み続けていると菊地さんがまだ装幀をしてるのだろうか。よくわからないけど、何だか菊地さん装幀の本をこの頃買わなくなった気がする。たぶん菊地さんの作風が少しずつ進化しているのに、僕の目がある地点に留まっているせいだと思う。書店で何度も見かけてるのに、「アミービック」が菊地さんの装幀だとは気づかなかった。