指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

文庫本の解説。

昨日久々にハードカバーを読んだけどそれまで10冊以上連続で文庫本ばかり読んでいた。こんなことは本当に久しぶりだ。何だか学生時代に戻ったみたいだ。その頃に比べると価格は随分高くなった気もするけどそれでも尚一冊一冊を惜しげもなく読み飛ばせて文庫は気が楽だ。それにこのフォーマットが心情的にしっくり来るところがある。そのせいで作品に入って行きやすい気もする。収納にも場所をとらない。
ところで文庫には解説というのがまあ大体付いている。これは読みたくない気持ちと読みたい気持ちが相半ばというのが正直なところだ。読みたくないのは、たまに難解な作品などを読んだとき本編が問題で解説が解答みたいに読めてしまうことがあるからだ(にもかかわらず難解な作品は解説も難解で結局よくわからないことも多い。)。もちろん原則的には本編に問題も解答も含まれている。だからそれがうまく読み取れない場合に解説を読んでよしとするのは安易だ。解説は読まずに済めばそれに越したことはない、とどこかで思っているのは以上のような理由からだ。でも読んじゃうんだけど。
逆に読みたい気持ちを支えているのは、たまにものすごくいい解説に出会えることだ。そんな読んでよかった解説の付いた二冊を挙げる。それにしても解説って大きくうなずかせられるか、いや僕にはそういう風には読めないんですけどあんまりって気がするか、割とはっきりと二つに分かれるように思えるけど、どうでしょうか。

インストール (河出文庫)

インストール (河出文庫)

これは実は単行本で読んだんだけど書き下ろしが一編加わっている上に解説が高橋源一郎さんということで買った。でも「インストール」も読み直せて本当によかった。ウェブにつながってからのお話しか憶えていなかったが、それ以前の部分が結構重要なんじゃないかと気づくことができたからだ。おかげで頭の中の全体の構図が書き換わったほどだ。書き下ろしの一編もおもしろかった。そして高橋さんの解説。書評集を読んでもほとんどが好意的な評だし、もう高橋さんクラスになると何を読んでもおもしろく読めるのか?つかあの眼鏡に何か仕掛けがあるのか?とか思っていたんだけど、「インストール」が絶賛(と言っていいと思う。)される傍らで、一般論としておもしろくない作品に対する苦言もちらっと呈されている。ここのところ未知の作家にチャレンジし玉石混淆なのにとまどっていたので、正に百人の味方を得た思いでしたよ。
屈辱ポンチ (文春文庫)

屈辱ポンチ (文春文庫)

町田康節炸裂の二編を収録。とにかくおもしろい。つかこれ「くっすん大黒」より読み易くね?いやこっちがリズムに慣れたせいかも。みんな駄目になって行くし。しかも保坂和志さんの解説がすごくいい。自分の文学観をわかりやすく述べながら、だから町田康の作品を高く評価するのだという根拠がきちっと書いてある。またその文学観に諸手を挙げて賛成なので尚のこと読んでよかった。保坂和志さんの作品は評判を知りながら読んだことがなかったので早速買って来ちゃいましたよ。こちらも読むのが楽しみだ。