- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/11/25
- メディア: 単行本
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でもそれにしたって音楽を文章にするのは大変な作業だ。そこで多くの場合様々な他の音楽家(あるいは広く芸術家)との対比が導入される。音楽を語る言葉はそのことを通して立体的になり、よりふくらみと奥行きを持つ。大筋での位置関係がつかめてしまえば、村上さんの言葉を理解することがとても容易になる。たとえ取り上げられた音楽をまったく聴いたことがなくても、少なくとも言葉の上では村上さんの描く像を受け止めることができ、それで充分に楽しめる。 ブルース・スプリングスティーンとレイモンド・カーヴァー、ビーチ・ボーイズの「ペット・サウンズ」とビートルズの「サージェント・ペパーズ」、ゼルキンとルービンシュタイン。対比のない、たとえばスガシカオについての項などでは、話がリニアになりそうなところをいくつかのエピソードを配した上で曲の(と言うか歌詞の)分析に入って行ってそれはそれで興味が逸らされない。ちなみにそこではスガシカオの文体がテーマになる。おもしろそうだよね。
しかし何でもそうだけど音楽もやっぱり繰り返し聴き込まないと滋味が味わえないのだろう。それほど聴き込んだCDが僕には一枚だってあるだろうか。そう言えば「大公トリオ」も買ったきり一度しか聴いてないんだったなあ。