指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

縫の謎。

告白

告白

というわけで「告白」を読み終えた。何度か感想を書こうと思ったのだけどどうにもうまく書けそうになかった。今でも書けそうにない。なんて言うか、すごかった。
でも何も言えないのも悔しいので、つか別に悔しかないんだけど読んだ本についてここまで書いてきた手前「告白」を仲間はずれにするわけには行かないので、物語の切なさに画竜点睛した感のある「縫」という登場人物について触れる。
周囲からは極道と後ろ指を指されている主人公の熊太郎の懸想を、あっさり受け容れた縫は熊太郎との逢瀬を重ねるが、そのうちに逢う間隔が遠くなって行く。熊太郎にはその理由がわからない。縫の家に弟分を呼びに行かせ久しぶりに逢えた縫を熊太郎はなじる。「しゃあけど、おまえもあれやろ。もうこなして俺と会うのん嫌なってんろ?」これに対して縫は答える。「(前略)私はすぐ近くにあなたがいることが分かっていて、あなたが生きてることも知ってるから、会っても会わなくても私にとっては同じこと」でもその後に「私は変わらずあなたが好き」と付け加えるのだ。
そういうことでいいんですか?
でもこういう女の子っているんだよね。その姿が本当によくつかまえられているなあという気がした。もう男からすると不可解で仕方ないんだけど本人は至って無矛盾なんだよね。なじる自分の方が間違ってるような気がしてくるんだよね。
この縫が熊太郎の行く末にとても大きな役割を果たすことになる。もちろん大きな役割を果たされたって熊太郎自身文句をつける筋合いがないほど、それは熊太郎の自業自得、身から出た錆だ。それは確かにその通りだ。でもやはり熊太郎がかわいそうでならない。自業自得というのは、それを言われている当人の心の中を全く勘定に入れないことを抜きにしては成り立たない言葉だからだ。