指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

心に残る言葉。

子供は絵を描くのが好きだ。描くと「これ、どう?」と言って見せに来る。条件反射のように「じょうずだねえ。」と感心して見せる。それでもやや不満そうに見えるときには、どこがどう上手かというのを思いつくままに話して聞かせる。それで大抵は納得してもらえる。
一度何の気無しに「もっといっぱい描いたら、もっと上手になるよ。」と言ってみた。別に他意はなくて自分なりにそのとき思ったことをそのまま口にしただけだ。するとこれが印象深かったらしくて、見せに来た絵を「じょうずにかけたねえ。」と誉めると、うん、と、うなずいた後で決まって「もっと描いたらもっともーっと上手になる?」と尋ねるようになった。そうだよ、もっといっぱい描いたらもっともっと上手になるよ、と答える。子供は満足げにまた新しい絵を描き始める。
僕自身が子供に対して言った言葉で今のところ一番気に入っているのが、このもっと描けばもっと上手になるよ、という一言だ。