指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

ファッションチェック。

家人は「姫」と呼んでいるのだが、子供と同じ組にひどくおしゃれにこだわりのある女の子がいる。子供と同い年の年中さんなのでせいぜい5歳になったかならないかなのに、幼稚園の通園服がださくて着て行きたくないと毎朝ごねていたらしい。6月の衣替えから通園服を着なくてもよくなって、それで出席率が格段に上がったそうだ。
その格段に上がった出席率のせいで、登園のときに行き会うことが多くなった。うちの方がたいてい何分か早く登園するので、子供を送り終えた帰り道にその親子とすれ違う。この頃は互いに顔も覚えてきたので挨拶をする。お母さんもその子も、僕が誰の父親であるか知っている。
その子が「mくんのパパは今日も青い服を着ていた。」と言ったと聞いて来たのは、迎えに行って母親同士でそれなりに話をして帰って来る家人だった。
確かに僕は青系のボタンダウンばかり持っている。でもそこに至るまでには僕なりの試行錯誤と紆余曲折があった。決して安易に青を選んだわけではない。青だけでは実現できない世界があることもよく知っている。それにいまだに憧れてもいる。でもその世界に踏み出すのにはすごいリスクがあることをここ二十年くらいでしっかりと学んだ。そうしてたどり着いた静かな青の時代が今なのだ。でもそんなことを「姫」にわかってもらおうと思ってもかなわない。
それで青くないシャツをどこかから引っ張り出して来て着て行くと、その日に限って「姫」に会わない。次の日も別のシャツを着て行ったらまた会わない。それで青以外のストックが尽き、仕方なく青のシャツを着て行くと会う。まあ、そういうものだ。
その他にも「今日は短パンだった。」とか「今日はサンダルだった。」とか「今日もまだサンダルだった。」とか「姫」のチェックは尽きない。「まだ」って何だ?僕はサンダルから靴への進化の途上にいるのだろうか。
でもやっと先日「姫」のお眼鏡にかなう服装で「姫」に会うことができた。感想は「今日は靴でよかったね。」ということでとりあえずおとがめなしだった。ちなみに「姫」は男の子が嫌いでほとんど男の子と話さないそうだ。僕も直接話をしたことは一度もない。