指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

ウェブ事業再開の憂鬱。

何だかぼんやりとした言い方になってしまうけど、提携会社が管理していた通販サイトのスタッフが、諸々の事情によりうちの会社に引っ越してきた。そのサイトは開設からまだ一年経っていないながら楽天でそこそこの成功を収めている。それまでに僕は今の会社で四つのサイトを管理していた。管理していると言ってもここ一年半ばかりは忙しくてまるで更新していない。それでも中の一番古いサイトは今でも割とアクセスを集めているし、一番新しいサイトは通販をメインにしていてそれなりの売り上げを上げている。残る二つも通販を扱っているが現段階ではほとんど機能していない。わかりにくくて申し訳ないがそれが前提だった。これらのウェブ事業をばらばらではなく一括に管理して効率と売り上げを上げることが今後の課題ということだった。
うちが管理している四つのサイトの内機能していない二つはとりあえず閉めることにした。一番古いサイトはそのアクセス数の安定度から広告塔と位置づけ、主に商品を紹介する役目を負う。現実的な制約があってこのサイトでは通販を扱うことができないので、ここから提携会社の楽天内にあるサイトとうちの一番新しい通販サイトにリンクを張ってそこで商品を買ってもらう。広告塔は僕が十年少し前にテキストエディターでタグを書きながらつくったデザインを今でも踏襲していて、見づらいのでブログ形式にリニューアルする。
ここで先方のスタッフから希望が出された。楽天のユーザーは楽天内で買い物をするだけで外へ出て行かない傾向を持つある意味特殊なユーザーなので、楽天にあるサイトとほぼ同内容の姉妹サイトを楽天の縛りのない外部にもうひとつつくり、より幅広く顧客を取り込みたい。また広告塔のリニューアルについてはコンテンツを外部委託でつくりたいので初期費用が三十万円、ランニングコストが月々数千円かかる、ということだった。
大体僕はこの楽天にあるサイトの損益のあり方が気に入らなかった。楽天のコスト以外にも広告やノベルティーなどに金がかかりすぎている。提携とは言えよその会社のことだから別に構わないと言えば構わないが、大枚払って姉妹サイトをつくったりするリアリティーでおたくの会社のサイトも初期費用三十万でリニューアルなどとは言って欲しくない。自慢じゃないがうちは月々一万五千円で四つのサイトと会社のすべてのメールアドレス、メーリングリストの維持をまかなっている。その上通販で月々数十万ずつの売り上げを計上しているのだ。採算がとれているかどうかは仕入れや輸送費などまで含めてもっと詳しく見なければわからないが、現状でうちより十倍のコストをかけているあなた方はうちより十倍の売り上げを上げているのか?
という訳で姉妹サイトは勝手にすればいいが、うちのサイトのリニューアルは初期費用数千円のCGIを設置することで勘弁してもらいたいと答えた。こちらには十年間つくり貯めたコンテンツが商品数にして千点分以上あり、時間さえあればいくらでもその数を増やすことができる。
時間さえあれば?
結局そこに行き着くことに気づいてひどく憂鬱な気分になる。一年半休んでいたコンテンツ制作に、近くまた手を染めることになるのだろうか。