指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

作品内の温度差。

鴨川ホルモー

鴨川ホルモー

海なんか泳いでるとよくあるし今日も子供を連れて行った温水プールでもたまに感じるのだが、水温の層をくぐり抜けて急に水が冷たくなったと感じられたり温かくなったと感じられたりすることがある。実はこの作品はほとんど一ヶ月近くかかってやっと読み終えたんだけど、前半と後半とでえらく温度差がある気がしとにかく前半を読むのに骨が折れた。もちろん作者は時折立ち止まっては「ホルモー」について説明しなければならずその間物語が止まってしまうせいもあると思うんだけど、何かこううまく言えないがそれだけが原因ではない気がする。例を挙げると女人禁制の「吉田代替りの儀」の場面なんか作者がすごくおもしろそうに語っているほどおもしろくない。一事が万事で淀んだ感じばかりが先に立ちいったん本を閉じてしまうとなかなか続きを読む気になれない。作者が物語を自分から切り離して対象化するその度合いが低いせいだと言いたいところだけど、それなら後半だって同じことだ。
それが主人公が「第十七条」を発動するために画策し始めるあたりから文章の温度が変わり、展開も早くテンポも良くなる。そして「エピローグ」の部分でまた元の温度に戻る。「エピローグ」の数ページも読み通すのがつらかった。
ただこれを我慢して読まないと、「ホルモー六景」は訳わかんないんだよね。「ホルモー六景」はすごくよかったんだけど、それはまた別の日に。