指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

手をつなぐ。その2

今しがたのことだ。登校する子供の後ろを例によって少し離れて歩いて行った。すると脇道からやって来た女の子が子供に向かって小さく手を振った。視界の端にそれが見えた。女の子は僕に遠慮するように、子供の後ろを歩く僕のさらに後ろを着いて来る。校門まで送るのをやめて、じゃ、ここからはひとりで行きなさい、と途中で立ち止まり見送った。すると僕を追い越して歩いて行った女の子が子供に追いつき、そのまま肩を並べて歩き出した。ときどきお互いの方に顔を振り向けているのは、何やら言葉を交わしているらしく見えた。とてもとても安心した瞬間だった。
つないだ手を放すことは他の誰かにその手を受け渡すことでもある。そう気づいた。僕が手を放しても、子供と手をつないでくれる誰かが向こう側に必ずいるのだ。