- 作者: 片岡義男
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1988/08
- メディア: 文庫
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「さっきまで優しかった人」で描かれるのはそういう自分のあり方とは対局みたいな恋だ。クールで余裕があり自制力が効いていて哀しみが乾いている。自分との違いがどこにあるかと考えても、生まれが違うんだというある種の運命論みたいなところへ返して行く他どうにもやりようがない。こういう世界に憧れる人たちはきっとたくさんいるだろうし僕だってもっとずっと若かったら憧れたかも知れない。でも今はこういうことは自分には起こりえないというところで決着してしまう。起こる人には起こるんだろう。でも僕には起こりえない。
「スローなブギにしてくれ」から何年後の作品かはっきり知らないが、作者の関心はもう青春を描くことにはない。そのせいで、ここまで書いてきたこととどれだけ矛盾しているように見えても、今の自分により近い作品集のように思われた。