指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

九つの暗い物語。

ナイン・ストーリーズ

ナイン・ストーリーズ

暗い話は決して嫌いではないけど、久しぶりに本格的に暗い話をまとめて読んだ気がした。直感だけど作者が自分の抱えた何かを必死になって作品に塗り込めて行き、そのことによって少しでも自分の身を軽くしようともがいているのだとしたら個人的にはすごく納得が行く。作者は何かとても暗いものを抱えている。作品からのぞき見するとそれは戦争のようにも人種のようにも読み取れるけどそれが何かを特定することはさしあたってここでは措く。ただその何かから作者が相当深刻な影響を受けていることがわかればそれでいいんじゃないかという気がした。それはもうPTSDと言ってもいいような何かだ。
愛すべきホールデン・コールフィールド君がこれを読んだら何と言うだろうかとちょっと思った。「彼は『ナイン・ストーリーズ』という短編集を出していて、こいつは掛け値なしに最高の本だったね。」とDBの短編集について言ったのと同じことを言っても少しも不思議じゃない気がする。