- 作者: 川上未映子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/02/22
- メディア: 単行本
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すごく大雑把な言い方をすると、この作品には自分の身体に対する二種類の違和が描かれている。ひとつは乳をめぐる母親の違和でもうひとつは卵をめぐる娘の違和だ。そして母親が自分の違和を解消しようとする試み、あるいはその試みに込められた自己欺瞞が娘の娘自身に対する違和に拍車をかけてしまうことになっている。ただしその背景にはもう少し複雑な母と娘の無言の思いがあり、結果的にそれが表面化することによりふたりの間が融和しそうな気配が兆して作品は終わる。
個人的にはこの、自分の身体に対する違和の感じ方に違和を感じた。それは、こんなことあるわけないじゃんという否定的な違和感ではなく、実感としてはわからないけどそういう感じ方もあるかもねという肯定的な違和感だった。自分だって自分なりに自分の身体のあり方に違和感を持ったり劣等感を持ったりして来たし今だって同じだ。でももしかしたら、と思うんだけど、異性に自分の身体をほぼ全面的に受け容れてもらえる生活の中では、こうした違和感は随分薄まるのではないだろうか。あなたが好きですと毎日言われたり実感できたりすれば自分の鼻が低かろうが口がでかかろうがあまり気にしなくなるような気がする。
母親が別れた男に会いに行った先で何があったか、作中にははっきり触れられていないが、個人的には以上のような文脈からそれを推定したい。