- 作者: 高橋源一郎
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2009/09/04
- メディア: 単行本
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だからこの本の出版は大歓迎だった、かと言うと特にそういうこともなくて、好きな作家の新刊が出た、という以上の感慨は無かった。もちろんそれだけだって個人的には大した喜びなんだけど、聴講したい講義が本になった、そのことに対しての特別な喜びというのは感じなかった。本は本だ。ライブではない。高橋さんのお姿はこれまで三回だけ目にしたことがあるけど、ライブとはそういうもので、反対から言うとライブも本とはあまり関わりが無い。少なくとも自分にはそんな風に受け取られている。我ながら何を言ってるんだかよくわからない。ミーハーだって言いたいのか?
もう全然人ごとと思えない話があってそこは感動した。遠くに、すごく遠くに届いた言葉の話だ。それから「詩」の定義。ル・グィンの言う「左ききのための文章」。読むこと、書くこと、考えることに関する大切なことがてんこ盛りに盛られていて最初から最後まで食い入るように読むしかなかった。
これはおそらく講義録ではないので、聴講生の提出する文章には手が加えられていないとしても、高橋さんの講義の部分は話された生の形ではなく、書かれたものではないかという気がする。その文体が軽いのに説得力があってすごくいいと思った。少し襟を正した「タカハシさん」といった感じだ。何が大切かを知り尽くしていて、それを損なわないように損なわないように心を砕く、優しいおじさんの感じだ。