指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

冥王星Oと水星C。

魔界探偵 冥王星O デッドドールのダブルD (講談社ノベルス)
越前魔太郎原案、舞城王太郎作、ということで越前さんというのは冥王星Oのシリーズをたくさん書かれているらしいけど、一冊も読んだことがないし、大変申し訳ないけどこれからも読まないと思う。だから越前さんの冥王星Oと舞城さんのそれとがどのように結ばれているのか、あるいは、越前さんのシリーズの一作をなぜ舞城さんが書くのか、そもそも越前さんと舞城さんにどういう関わりがあるのか、全然わからない。でも考えてみればもともとこれから読む本に対してできる限り事前の情報をシャットアウトして読みたいので、それで全然構わない。
読み始めると少ししてすごく新鮮な読み心地(という言葉があるかどうか知らないけどあるとしたら。)になる。語り手「冥王星O」の置かれた立場はすごくタフでタイトなものだけど、ぞれがそれほどタフにもタイトにも感じられないのは舞城さんの語り口が例によってスピーディーでとにかく前に進んで行くエネルギーに満ちてるから、なのはいいとして、新鮮に感じられる理由はまた他にある。それは作品を書くに当たって作者が自分に課した制約が通常よりゆるいように感じられることから来ている。もちろん誰か他の人が続けているシリーズを本歌取りして書くのは制約がすごく多い作業だと思うけど、逆に言えばその制約さえ守っていれば後はいいんじゃないか、という開放感がこの作品にはある気がした。少なくとも舞城さんのこれまでの作品に、吸血鬼や狼男は出てきていない。魔族もない。作者はとても楽しんでこれを書いたように思われる。
冥王星O」と「水星C」は無関係なんだろうか。そうは思えないけれど。