指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

生きることと考えること。

かたちだけの愛 平野啓一郎著 「かたちだけの愛」
生きている限りはいろんなことを考えなければならないけど、生きることと考えることのどちらが大切かと言うと個人的には生きることの方を優先したい。たとえば愛なら愛を例にとると愛とは何かとひたすらに考え続けると、大本の愛するという行為そのものに悪影響を及ぼしかねない。突き詰めないままある程度ほどけたような感じで行った方が愛は長続きする。これは実感だ。だから考え過ぎないようにする。
そうしていても気づきというのが向こうからやって来るのを押しとどめことができないことがある。いくつかの気づきをつなげると今まで耳にしたことがないような新しい見解が生まれる場面も思い描くことができる。そういう言い方をすれば、平野さんの作品の多くは気づきとそのつながりによって否応なく書かれざるを得なかった作品と言っていいと思われる。愛し合うことはその頂点で相手を消し去ることによって達成される、といった見解など、いや確かにその通りと思わされる。また愛の始まりについてのいささか散文的な見方も同じだった。
ところで個人的にはヒロインの姿が最後まで明確な像を結ばずに終わった。それは作者の意図通りなんじゃないかと今は考えている。