指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

読まない訳に行かない。

鼓笛隊の襲来 (集英社文庫) 三崎亜記著 「鼓笛隊の襲来」
三崎さんの新刊が出ると読まない訳に行かない。さすがにハードカバーは我慢するけど文庫は買う。どうしてなのかは自分でもよくわからないんだけどとりあえず何も考えずに楽しめるというのが大きいかも知れない。確かに「バスジャック」の中のいくつかみたいにちょっとがっかりな作品もある。でも大筋ではどれもおもしろいし文体でつまずくこともほとんど無い。なんでも正直に打ち明けられるほどには心を開いてはいないけど、一緒に遊べばノリが合って楽しい友だちみたいな感じだ。だから本当はすごく大切な作家という訳ではないのかも知れない。すごく大切でもないのに読まずにはいられない、そういう作家はでも今のところ三崎さんしか思いつけない。不思議だ。三崎さんの作品みたいだ。
もし何かを深く考えさせるような要素が加わったら、三崎さんの作品は安部公房さんの作品に似てくるだろう。安部さんは意識的に公的文書とか新聞とかいった既成の文体を作品に取り込んだ。三崎さんにもそういうところがある。それは「となり町戦争」からそうだったし、今回も天気予報の言い回しなどの取り込みが見られる。また「覆面社員」などは安部さんの「他人の顔」を思い起こさせる。たぶん三崎さんは安部さんのよい読者なのではないかと推察される。
テレビ番組の「世にも奇妙な物語」で取り上げたらおもしろそうな作品がたくさんあった。