指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

ただミステリーであるだけでなく。

九月が永遠に続けば (新潮文庫) 沼田まほかる著 「九月が永遠に続けば」
これが沼田さんのデビュー作ということでいいんだろうか。文章の重厚な感じが印象的でただミステリーやホラーであるだけでなく文章で勝負したいという意気込みをすごく感じた。エロとかグロとか言われてるらしいけど上には上がいるのでそういう評は良くも悪くもあまり当てにならない気がする。ただ謎解きは確かにすごく意外なんだけど特に後半へ行くに連れて恣意的と言うかあまり必然的じゃないような気がしてしまう。これは登場人物の心の動かし方にも感じられる。そのあたりがもうちょっとかっちり設えられていたなら謎解きの意外さも格段に説得力を持ったんじゃないかと思う。これは「彼女がその名を知らない鳥たち」にも感じたことだ。
関西弁の中年の喫煙者でどうも女性にはもてそうもない男が意外と重要な役回りになるのは「・・・鳥たち」と同じ。あと子供に対する虐待の兆候が描かれているのは特に何の伏線でもないんだろうか。ハムスターと同じか。