指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

シドニーのグリーン通り。

塾でひとりで電話番をしているとシドニーのグリーン通りに探偵事務所を構えて仕事の依頼主を待ってるというのはこういう気分なのかなと思えて来ることがある。グレン・グールドのかわりにユーミンばかり流れているけどどこからも電話はかかって来ないし郵便物は破り捨てるし本当に静かだ。もちろん僕は大金持ちではないからおもしろい仕事しか引き受けないといったぜいたくは許されないけどなんて言うか暇の質がとても似てる気がする。ある時刻になれば生徒さんたちがやって来て仕事が始まる。でもそれまでは来るのか来ないのかわからずまあ大抵はやって来ない新規の客を気長に待ってる訳で暇は暇なんだけどじゃあ引き出しからバーボンの瓶を取りだして飲み始めちゃっていいかと言うとそれはしちゃいけないことになってる。暇だけど自由じゃなく、仕事だけどやることがないというのがシドニーのグリーン通り的時間の本質だと思われる。