指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

きっちりしたイギリスの小説。

呪われた腕: ハーディ傑作選 (新潮文庫)

呪われた腕: ハーディ傑作選 (新潮文庫)

人間の宿命を骨太でありながら意外なストーリー展開できっちり描ききった短編集だ。最初の一編を読めばその隙の無い手堅さに心を奪われ、後はストーリーテリングの力を信頼しながら安心して読み進めることができる。イギリス独特な感じがするのは地名のせいばかりでなくなんとなく因習めいた空気、暗く風通しの悪い雰囲気が漂うせいと思われる。全八編のうち個人的にいちばん印象に残ったのが二編目の「幻想を追う女」。ラストはひとつの誤解に基づいているんだけどそれが誤解であることを証す伏線がかなり以前にしっかり張られている。もうひとつ舞台の一部である海の描き方がよかった。こういうのをゴシック小説というのではないかと思ってウィキペディアを読んでみたんだけど微妙に違うみたいだ。でもとりあえず、明るいお話は一編も無い。