指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

子供の学費を振り込む。

 子供の前期の学費を六月いっぱいまでに振り込まなければならなかったのでこの前奨学金が振り込まれる口座から必要な額を下ろして振り込んだ。奨学金がもらえるような貧困な世帯ということで学費は大幅に減額されていて前期分は全部含めても二十万円に届かず安いと言えば大変に安い。予備校の半分くらいだ。奨学金からはあと教科書代なんかを払っていてこの前は子供が使う新しいパソコン代なんかも払った。それでもまだ二十万円近く残っている。後期の学費を支払うまでの何ヶ月かの間にまだ毎月一定の額が振り込まれるので今年度末には結構な金額が口座に残ることになるだろう。子供の成績次第では支給が打ち切りになったりする可能性もあるので卒業までは最低限しか手をつけないつもりでいる。卒業したときに残金があれば子供が自由に使ったらいい。その頃には僕はすでに年金を前倒して受給し始めてるはずだ。そう考えると見通しはちょっとだけ明るいものになる。少なくとも奨学金の支給が続く限り経済的には何の問題もなく子供を卒業させることができる。
 家人はここのところずっと仕事をしていてそういうときは特に食事は簡単なものになり勝ちだ。買ってきたものを温め直すだけということも多いけど他にもひと通りの家事はやってもらってるのでもちろん文句なんか言える筋合いではない。子供に対してはある程度気を遣ったものを用意してるらしいのでそれで充分すぎるほど充分だと思っている。たまに食べたいものを尋ねられるのでこの前は冷やし中華と答えたらちょっと今はつくれないと言うのでそれはそれでしょうがないと思い諦めた。それが今日バイトから帰ると昼食は冷やし中華だと言う。もしかしたら仕事が一段落しそうとか終わりが見えてきたとかそういうことなのかも知れない。家人の仕事の大変さというのは端で見ていても全然よくわからない。熟考してるとか呻吟してるとかいう姿はまるで見たことがなくて話を聞く限りではプロットさえ決まってしまえば割にすらすら書いてほとんど書き直しもしないで版元に送ってるみたいに感じられる。特に疲れた顔を見せたり機嫌が悪いときがあったりする訳でもない。それでも周囲からはうかがい知れない苦労とかプレッシャーとかはそれはもちろんあるんだろうと思ってできる限り気を遣ってるつもりではいる。それで特に夫婦仲が悪くなることもないのでこちらの出方もそうそう間違ってる訳じゃないんだろう。こういうのはあまり深く考えないのが夫婦円満の秘訣かも知れない。つくれないと言われたら冷やし中華はあっさり諦めるとかこの前つくってあげられなかったから今日は冷やし中華にしようとかその程度のわかりやすい気遣いくらいでちょうどいいんじゃないかと思う。あとはやっぱりお互いに感謝することですよね。とおしまいはちょっと説教くさくなった。