指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

一流シェフの手になる家庭料理としてのエッセイ。

 短編小説&エッセイ集。これもブックオフで随分前に買っておいた。ANAグループの機内誌「翼の王国」の人気連載ということで短編小説が十二編エッセイが十一編収録されている。機内誌に連載というだけあって短編小説は昨日取り上げた「キャンセルされた街の案内」みたいに実験的な色合いはなくてストーリーテリングの方に全フリされている。機内で読むにはうってつけの小さな物語たちだ。それに比べるとエッセイの方はやや読みづらいように感じられる。小説が一流シェフがお店で出す料理だとしたらエッセイの方はそのシェフが自分自身のためにつくる手料理のようなものだ。と作中のたとえをまねして言ってみる。前者はある程度誰の好みにも合うようにつくられてるのに対し後者は自分の好みに合わせてつくってるので一般ウケはややしづらい。柔らか過ぎたり味が濃かったりこってりし過ぎてたり。でもまあ作者の生(なま)に近い人物像に興味があるならそれなりに楽しく読めるかも知れない。ただし肩の凝らない一冊のようでいて深く読むといろいろ考えさせられる。個人的にはその点をこの作者の最大の魅力と考えているようだ。