指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

必死。

 ラストまでバイトすると普段よりも寝るのが遅くなるので睡眠時間が短くなって昨日の疲れを引きずったまま今日が始まった。でも泳ぐのを休もうとは思わなかった。なぜかな。とにかく七時前に起きて家人の用意してくれた朝食をとってから出かける。いつもよりちょっとだけ早くプールに入ることができる。調子がひどく悪いとは思わなかった。ただ今日はもう泳ぐのやめようかなとは途中で何度か思いその度に許された時間までは泳ぎ続けようと思い直す。それで結局千メートルをなんとか泳ぎ終えたときには四十分近くが経っていた。まあしょうがない。そういう日もある。
 連絡がもらえなかった生徒さんはたぶん不合格だったんじゃないかと考えることにすると都立高校には今年ひとりしか合格しなかったみたいだ。うちの子と同じ高校で偏差値はそこそこ。不合格だった生徒さんについて言えばこれもまたまあしょうがない。そのうちには入試よりも期末考査の対策を優先してた生徒さんも含まれる。もちろんそういう選択は本人の自由なんだけど言わんこっちゃないともちょっとだけ思わないでもない。まあそれが合否を分けたかどうかも本当はわかんないんだけどね。でも受験の日までは受験対策に全フリしといた方がよかったんじゃないかなと思う。悔いを残さないためにも。
 必死に千メートル泳いでから午前中のバイト。疲れのせいでいい感じで力が抜けてたのかそれほどきつくなかった。ただ三月からプール内でのルールが一部変更になって告知をきちんと読んでくれたお客さんはいいんだけど早呑み込みの人も結構いてそれはルール違反に当たるので我々としては見過ごす訳に行かない。その点でちょっと仕事が増えて大変になった。まあすぐに慣れるんだろうけど。このバイト先は意外とトップダウンで現場の意見に耳を貸さない傾向がある。中枢は末梢の奴隷だっけ。そういういい言葉もあるのにね。
 バイトから帰ってシャワーを浴びて飲んで食べて昼寝。目覚めたときにスマホのアラームを解除したらしい。でもそこからまた眠ってしまい次に起きたのが塾が始まる五分前。ベッドを飛び出しあわてて服を着て塾に駆けつけ始業の一分前に着いた。時間通りに来ない生徒さんばかりの日で助かった。夕方からバイト。でも思いがけず一時間半受付の仕事に回してもらえて結構楽できた。僕より古くからいるバイトの学生さんがプールの外からガラス越しに手を振ってるのに気がつき手を振り返すと会釈をするので会釈を返した。後でグループラインを見たら今日でバイトを辞めるんだそうでそれでわざわざ手を振ってくれたんだなと腑に落ちる。仕事ぶりは決して褒められたもんじゃないけど長い間断続的に一緒に仕事をしたしなんか相談事みたいなこともされたのである程度信頼されてたのかも知れない。言ってくれりゃあシャーペンあげたのに。でもまあ幸多かれと願う。
 とりあえず一日乗り越えられてよかった。必死だった。