指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

ショボかった。

 バイト仲間のシマオさんの最後の出勤日でこれまでの成り行きから言って心のこもったお別れの言葉が交わせるものと期待してたのに蓋を開けてみたらものすごくショボかったのでそのことには触れない。
 プールのお客さんで割に感じのいい人がいて(つか世の中には感じのいい人というのが僕が思ってるよりはるかに高い確率で存在するような気もする。)何度か話をしたことがある。三十代半ばの男性で主にバタフライと背泳ぎで泳ぐ。これまで必ずひとりで来てたんだけど今日は小学三、四年生くらいの男の子を連れていた。お久しぶりですと声をかけたあとお子さんですかと尋ねるとにっこり笑ってそうだと言う。ごゆっくりと言って仕事に戻ったんだけど見るともなしに見てると(なにしろお客さんの様子を見てるのがプール監視人の仕事なので)とても仲よさそうに遊んでいる。泳ぎのうまい人の中には子供連れで泳ぎに来てもあわよくば子供をほっといて自分だけ別のコースで泳ぎたがる人が散見される。それについては日をあらためて触れるかも知れない。でもそういうのと全然違ってお父さんもお子さんもすごく楽しそうだった。見てて本当に心が温まる。このお父さんならきっといい子が育つんじゃないかという気がする。
 今日のスイムは33分19秒で千メートルで昨日より二分近く遅い。でもひどい疲れを引きずっての結果なので自分としては自分を許してやりたい。明日は午前中バイトがないけどいつも通りの時間に出かけて泳ぐつもりでいる。