指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

たぶんもう少し磨き上げられるべきお話だった気がする。

 ガブリエル・ガルシア=マルケスの未完の遺作。一応お話としては終わってるように見える。でもたぶんもう少し手間暇かけて磨き上げられるべきお話だった気がする。分量としては似てるんじゃないかと思われるたとえば「予告された殺人の記録」なんかと比べても物語の完成度と言うかもうちょっと肌感覚に近い言い方をすると硬度みたいなものが足りないように感じられる。もちろんそれが作者にこの作品の完成を断念させた理由だろうと推測される。晩年の作者は記憶力が低下していた上に認知症の兆候もあったと言う。でも一文一文を丹念にたどって行けばこの作者が捺した文体という刻印をほとんどすべての行から読み取ることができる。文を書くための前提となる世界観もしくは発想の次元が我々のものとは決定的に異なってることがどの行からも感じ取れる。それは往年のファンからすればやはりひとつのとてつもなく大きな喜びと言っていい。そしてそれを喜びと捉えるならこの本を手にする意義は充分過ぎるほどあると思う。ひとつだけあまり大したことじゃないかも知れないんだけど気づいたことを書き留めておく。主人公の女性が不倫相手の性器について自分の「夫ほど恵まれていない」と評するくだりがある。これは作者がこの作品は実は不倫小説なんかじゃないんだと宣言してる証のように読める。官能小説的な世界観なら不倫相手の性器は常に夫のものより恵まれていなくてはならないからだ。それをわざわざ「恵まれていない」とするところに作者の譲れない何かを目の当たりにした気がした。
 今日のスイムは千を27分23秒で昨日より遅いものの満足の行く結果。ゴーグルに水が入っちゃったので二百メートルのところで一回泳いだ距離を数え間違えて九百メートルのところで一回それぞれ短い休みを取ったけどまあほぼ千メートルを無休で泳いだ。お昼は子供が出かけてたのでおにぎりセットとカップ麺で簡単に済ます。これから夜の授業。