指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

おじさんが読む「Millie's Marvellous Hat」。

お題「大好きな絵本は何ですか?」

 一時期英米の絵本にはまってまとめて読んでたことがある。この本の和訳は「ミリーのすてきなぼうし」というタイトルで小二だったか小三だったかの国語の教科書に収録されてるからお子さんの宿題で音読につき合われたことのあるおうちの方の中にはなじみのある方も多いかも知れない。作者はKitamura Satoshiさんで言うまでもなく日本の方だ。ただし事情がちょっと込み入ってるのはこの本を描かれた頃のKitamuraさんはイギリスご在住で最初に英語版で作品を発表なさっていた。だから「ミリーのすてきなぼうし」よりもこの作品の方が出版は先だ。ちなみにAndersen Pressはイギリスの出版社。その全貌まではよく知らないけど絵本で言うとたとえばマッキーのぞうのエルマーのシリーズなんかも出している。話を元に戻すとこの作品が出たばかりの頃英語で読んで深く感動した。想像力というもののほんとに素敵なあり方をこれほど身近な素材でまたこれほど豊かに示した作品をそれまで知らなかったからだ。もうひとつ。ミリーに応対する帽子屋のおじさんがものすごくいい。世間知らずの子供に対して子供扱いなどひとつもせずそのまっさらな心をまったく傷つけずに済む方法を思いつきどこまでも丁寧な物腰で実践してくれた。そしてその方法が同時にミリーの想像力を深く豊かな方向へと広げる役目も果たしている。もちろんストーリーも絵も申し分なくすばらしいんだけどいちばんすばらしかったのは作者がこの帽子屋のおじさんを造形し得たことだったかも知れない。ところで僕はこの作品を日本語より先に英語で読めてとてもラッキーだったと考えている。それはどうしてかご興味がおありの方は機会があれば英語版も手に取って日本語版と読み比べていただけると大変うれしい。