- 作者: ドストエフスキー,亀山郁夫
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/11/09
- メディア: 文庫
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「鳥のように獣のように」所収だったか、中上健次さんがエッセイの中でドストエフスキーの文体を通俗小説の文体じゃないかと書いていたのを思い出した。俺なら同じことをほんの数行で書いてやる、と。いかにも中上さんらしい言い方に思える。でもその後ドストエフスキーの草稿やメモを見てどれほど入念に作品がつくられたかを知って自分が今手がけている長編が難破するのではないかと不安になったとも記されていた。
カラマーゾフ三昧の今日、中上さんのもっともな言い分を思い出しながら、それでもドストエフスキーに肩入れするのは、この混乱した文体でしか表せない世界があってしかもそれがかけがいのない世界なのではないかという気がするからだ。キリストは最後まで黙して答えない。