指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

小説なんて書けない。

書きあぐねている人のための小説入門 保坂和志著 「書きあぐねている人のための小説入門」

(前略)
小説になる困難さを抱えた小説だけが、小説として書く領土を広げることができる。
(後略)

この本から受け取ったことの一番大切に思われることを挙げるとしたらここになる。吉本隆明さんの本にあった親鸞の逸話を思い出す。念仏を唱えても浄土へ行きたい気持ちが起こらないという弟子に、自分もまったく同じだが、念仏を唱えても浄土へ行きたい気持ちにならないのはよくよく煩悩が盛んだからで、だからこそ浄土へ行きやすいのではないかと答えたという話だ。一見いちばん遠い者が実はいちばん近いかも知れないという逆説。小説らしい小説なんかを目指していては到底小説家になどなれないという逆説。まあ、筆者はそれを逆説とは言わないだろうけど。
いずれにしても自分は小説など書けそうにない。でも小説をもっとよく読みたいと思う人にも随分参考になるんじゃないかと思う。少なくとも自分は読んでとてもよかったと思っている。