指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

夏至の未明。

持病でひどい痛みがあり鎮痛剤の助けを借りても前の晩五時間くらいしか寝てなかったんだけど、病院へ行って治療してもらって一応痛みが治まり念のため寝酒をやめて寝た昨夜はまったく眠気がやって来なかった。一度消灯してしばらくしてから仕方なくまた明かりをつけベッドサイドにちょっと前から置かれていた文庫版の「村上さんのところ」を読み始め少し眠気が差したかなと思って午前三時前に再び消灯するけどやはり眠れない。気がつくと午前三時を回っていて「ポケ森」の三時間毎のマイナーリセットが完了して新たなルーティンが増えたタイミングだったので立ち上げてひと通りプレイした後三度消灯したら耳元で蚊の飛ぶ音がする。明かりをつけると茶色い蚊が一瞬見えたけどとても捕まえられそうにない。あの蚊というのは部屋に入って来たのは少なくとも数時間は前なはずなのになぜ深夜になるまでなりを潜めているんだろう。部屋を出てワンプッシュ式の殺虫剤を持って来てレバーを押すとぱふっという小さな音がするばかりで薬剤が出てこない。よく見るとプラスティックのレバーが本体から外れかかっていた。面倒くさかったけど構造を確かめて思わぬときに噴射すると困るのでストッパーをかけてから修理する。途中何度か試したが駄目でやっとのことで殺虫剤を撒くことができるまでに何分くらいかかったか。とりあえず明かりを消して横になって耳を澄ませていたけどそれ以上蚊の音がしなくなったのはいいとして夏至の一年でいちばん早い空は白々と明けてくる。時計を見ると四時を回ったところでそこまで起きているとおなかもだいぶ空いている。隣室で眠る家人は子供のお弁当をつくるために六時に起きる。家人が起きるのを待って何か食べさせてもらおうと思いここに至って眠るのは断念して窓のカーテンを開けて明かりを採りながら本の続きを読んだ。六時まで読んで起きてきた家人にパンとジュースだけの簡単な食事を用意してもらって(お弁当づくりが大変なのはわかり切っているので最低限で充分。)食べ、寝室には戻らずに子供が起きてくる七時半になるまでまた三時間経ってルーティンが増えた「ポケ森」をやったり本の続きを読んだりした。子供が学校へ行き家人が買い物に行ってひとりになっても結局眠りは訪れなかったが家人が買って来てくれたウィルキンソンHARDを昼食前に一本飲んだらやっとちょっと本格的な眠気がやって来たので昼食後昼寝。結局三十時間近く起きていたことになるけどこれは無駄に睡眠時間の長い僕の人生では非常に稀なことだと思う。2018年夏至の日完徹事件。