指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

夕方泳ぐ。

 朝起きると泳ぎに行く気力というのが自分の中に感じられないことに気づいた。なんなのかねあれ。嫌な予感というのとも違うし疲れ果ててるというのとも違う。ただあえて言えば違和感みたいなのがあって泳がない方がいいんじゃないかという気がする。理由はよくわからない。それで七時前に起きて朝食の準備をしてくれてる家人にやっぱ今日はよそうと思うと言うと普段から僕はもっと休んだ方がいいと思ってるらしい家人はにこにこしてじゃあ行くのやめればと言ってくれる。こういうときに男なら一度こうと決めたことは石にかじりついてでも(意味不明)やり遂げなさいみたいに言ううちの母親みたいな人もいるんだろうと思う。でも家人は一貫して僕が楽になるような選択肢の方を笑顔で支持してくれる。そう言われるとこの人もこう言ってくれてるんだから今回は自分を甘やかしてもいいかあみたいになる。それがいい選択なのかどうかはわからない。でも夫に対する気遣いは伝わって来る。プラスできるだけ長い時間自分と一緒にいて欲しいと結婚後二十五年近く経っても尚家人が思ってることもなんとなくわかるようになってる。世界はそれを愛と呼ぶんだぜ。と思う。だからプールへ行くのはやめにして行くつもりでプロテインの粉末を入れちゃったシェイカーを携えて春期講習へ行く。授業の合間にシェイカーに水を入れて振って飲む。我ながらなんの運動もしてないのになんでそんなもの飲むのかわからない。でもまあ飲んどく。春期講習が終わると塾のドアの外で家人が待ってて一緒に買い物に出る。バスで三停留所分をいろいろ話しながら歩き昨夜居間に蚊が出たので駆除するための薬を買いお弁当屋さんで三人分のお弁当を買う。それからまたてくてく歩いて最寄りのスーパーへ行ってアテとかアルコールとか買って帰る。後はまあいつもと同じ。昼寝の後午後の授業を終えると一時間空く。つまり小学生の授業を終えると中学生の時間までに一時間空くということで今年度の時間割では火曜日はそういうことになった。それで泳ぎに行くことにする。残された時間は一時間。プールに行って着替えて準備運動するのに十分。泳ぎ終えてシャワーを浴びて着替えるまでに十分。とすると泳げる時間は正味四十分。昨今の調子で言うと四十分で目標の千メートルはお客さんもいることを考えに入れると難しいかも知れない。でも結果は34.11分で千メートルのまあまあの記録。よかった。すごい自信になった。その後も夜の授業を終えて今にいたる。じゃあね。