指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

バベルの図書館、再び。

書店に勤めてる知り合いに頼んで国書刊行会から刊行中だった「バベルの図書館」をまとめて購入したのは十五年以上前のことで、少し値引きしてもらって二十冊弱が揃った。それから先をどう集めたのかほとんど憶えていないけど長い間うちには三十巻中二十巻あまりだけが揃っていた。
この前書店で時間をつぶさなければならない折りがあり海外文学の棚を見るともなしに見ていたら、22巻に当たるボルヘスの「パラケルススの薔薇」があった。「バベルの図書館」の中でもボルヘスの巻は刊行当時を別にしてなかなかお目にかからなかったような印象を個人的に持っていた。それでなぜかスイッチが入って即座に買った。
読むとどこにも迷いのないボルヘス節の短編が四編と長いインタビューが収録されていた。もちろんどれもおもしろく読んだ。そしてどうしてこれだけ手練れの読み手が書くものの多くが詩か幻想譚になってしまうんだろう、という若い頃と同じ疑問を改めて抱いた。あるいはボルヘスにとって詩と幻想譚は紙一重のものなのかも知れないと思った。そう思いながらボルヘスをまとめて読んでいた若い頃のことを懐かしく思い出した。若い頃に自分の手にかなわないほど高級なものを無理して味わうことはあながち無駄じゃないかも知れない。