指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

親友と行くさぶちゃん。

中三のとき知り合った親友がいなかったら東京に出て来ることはなかったに違いない。彼に誘われて高二の時に駿台予備校の夏期講習を受けに行きその際書泉グランデの書籍の圧倒的な量にショックを受け、上京を決心したことは前にも書いたような気がする。それまでは地元の大学の教育学部に行き教師になろうと思っていた。最近ちょっと相談があってメールアドレスがわからなかったのでワープロソフトで手紙を書いて送ったら会おうということになって、その後お互いに駿台で浪人生活を二年過ごしたときにお昼に待ち合わせてよく行った神保町のさぶちゃんの半ちゃんラーメンを食べた。駿台を去ってから29年、彼に最後に会ってから18年が経っていた。
ここでも何度か書いている天丼いもやの角を曲がるとさぶちゃんはある。彼が大学に合格して東京を離れてから僕は一度も食べに行ったことがなかったけど、彼は数年前に東京に居を構える前から上京の機会があると食べていたらしくここ何年かの味の変遷を話してくれた。確かに記憶の中にある味とは随分違っているように思われた。以前はなんて言うか、もっとしっかりした味だった。でも長い行列ができていてそれは昔のままだった。
その後浪人時代の下宿があった荻窪を目指した。いろんな話をした。親のこと、家族のこと、彼の仕事の独立、これからの目標について、それから僕が持ちかけた相談事について。彼は自分では衰えを感じると言うが相変わらず頭の回転が速くそして相変わらず口が悪かったが、今まで相談した相手の中でいちばん親身に僕のことを考えてくれていることがわかった。18年なんてブランクじゃなかった。僕は10月いっぱいで会社を解雇されることになっている。その先のことはまだ何も決まっていない。