指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

はじめはどうしていいかわからなかった。

魔法使いクラブ 青山七恵著 「魔法使いクラブ」
第一章を読んでるときはちょっとこれどうしたらいいんだろうという気がしきりにした。語り手は小学四年生の「あたし」だ。でも割と現在形も使って書かれているから、後年になって語り手がその年頃のことを思い出して書いているという設定が思い描きにくい。すると語り手の位置は本当に小四かということになってしまいさすがにそれは不自然に思われて違和感が拭えなかった。第一章の語り手の位置はそれほど不思議でこれまで読んだことのない感じを持っていた。またこれはややネタばれになってしまうんだけど全編この調子で書かれるなら(実際にはそうではない。)この本の対象年齢は本当に小四とかでも大丈夫なよう思われ、自分などが読む作品ではないんじゃないかという気もした。実際第一章だけだったらたとえばうちの子のクラスメイトの女の子たちならかなりきちんと読むだろうと思われた。なんなら子供に勧めてみようかと思ったほどだ。
でもそこさえ我慢すれば第二章以降はずっと自然に読むことができる。そして最後まで読めば第一章のいろいろな要素がうまく腑に落ちることになっている。
でもそこまで行ってから振り返ってもまだ第一章の語り手の位置はやや不自然だ。その不自然さを解消するにははじめから三人称で書くか、第一章にもっと回想の感じを出すかのどちらかしかないように個人的には思われる。でもそのどちらを選んでも作品全体のインパクトが今よりずっと弱まることに気づかされる。この作品は本当にぎりぎりのところを辿って書かれているのだ。